対談 爆笑問題のニッポンの教養 vs 情熱大陸 後編

  1. 美しく端正なフォーマットよりゴツゴツとした憤りや怒り。番組作りの動機とは。
  2. “ドストエフスキー好き”をテレビのほうに取り戻せ!教養の本質とは何か。
  3. “要するに”で要約されるテレビなんてつまんない。駄々をこね続けるのである。

中野 『ニッポンの教養』に出演している先生を観ていて、自分と同年代の人が出ると、座標軸を作っちゃいますよね。この人がこの辺であの人があの辺で、で、自分はどの辺にいるんだろうと。あまりそういう番組ってないんですかね。それは求められてないからなのかなぁ。
 
丸山 僕は、ハリウッド系の映画も好きなんですけれど、ヌーバルバーグみたいな描写も好きで。ハリウッド系は2時間観ている時は楽しいけれど、終わって2~3日すると忘れてしまう。ヌーベルバーグは、観ているときは退屈なときもあるかもしれないけれど、なんかわからないワンカットが無意識に残像となって、2年経っても3年経っても残っていることがある。つまり観たところから何かが動き始める。出来ればそんなふうに『ニッポンの教養』を観て、一人でも二人でも“人生変わりました”という人が出てこないかな。そういうふうに番組作りを考えられないかなって、いつも思っているんですけれど。
 
中野 100年単位とは言わないけど、10年単位でそういうことを考えて積み重ねておくべきですよね。テレビの味方を育てるというか、テレビにひとびとを呼び戻していかないと本当に怖いことになる。どんどんヤバい方向にいってしまうと思うんです。アクションとリアクションだけを求めた刹那的な関係。グラフが上がった下がっただけを追い求める毎日。それだけじゃあやっぱり駄目でしょう? テレビというメディアを預かるひとは世の中を導いていく通奏低音みたいなものは常に意識して、たとえ低周波でも流していかないと。


丸山 1995年、映画誕生100年の絡みで、ゴダールの企画を考えた時期があって、集中的にいろんな映画を観ていました。批評家からスタートした作家の作品は強いんですね。当たり前の話なんですけれど、自分以前に映画を作っていた人たち……先行世代が整然とやってきたものが許せなかったわけで、そこには批評として何かが込められることになる。そのときに思ったんです。ものをきれいにつくる匠がいて、その人がきちんと作った形式に倣って作っていても面白くない。自分の中で生理的に納得いかないことがあって、社会の中で上手くいかなくても、稚拙でも何でもいいから寝返りうつように表現をする方がいいんじゃないかと。これからの世代も、何か苛立ってしまうものがあれば、もう一回それを映像に包み込む方向にいけないかなぁと思います。個人としてくすぶっているものを何とかしてもう一回外に出してやらないと力にならない。プロフェッショナリズムの作業としては、それを商品にまでする過程はもちろん必要にはなるわけですが、そういう思いが底にあって番組を作らないと、僕自身としても虚しい。仮に“予算を一桁上げるから、こういうの作れば?”って言われても、自分が作りたくなければしょうがないわけですから。ならば一桁減らされても、どこかで自分の持っている認識、世の中こう変わればいいなというところと線を結びたい。そうでないと作ってもしょうがない、とは思っています。ベルトコンベアー的にマーケティングだけでものを作ってゆく世の中は、若い人にとって魅力のない世界になってしまう。本質的にものを考える人には非常に怖い世界。フォーマットになってなくても、何らかの衝撃を受けて番組として表現したいと考える人が、小ぎれいにパッケージされたものを作りたいと思う方向にはいかないようにしたいですね。
 

中野 そのためには、こっちがやってみせないと、ですね。頑張って“これもアリ、あれもアリ”って実証していかないと。
 
丸山 そういう意味ではまだまだ我々にやれる余地はあるんでしょうけれどね。 


中野 今、NHKさんの番組では何年くらいやると長寿番組になるんですかね?
 
丸山 その辺のサイクルがどんどんやっぱり早まっているのか、もう……。


中野 でも一年くらいはやりますよね。そうでもないんですか?
 
丸山 いや、前よりサイクルは早まっているかもしれませんね。試行錯誤する余裕、実験を重ねていける幅はほしいと思うのですが。
 
中野 結構テレビご覧になるんですか?
 
丸山 いや、そんなではないんですが、意識せずただ自然に、たまたまっていうくらいですけど。さっきの『ひょうきん族』ではないですけど、大学生くらいでテレビをよく見ていたころみたいな感覚で、今も音が何もないとつけてしまうという感じはありますが・・・。
 
中野 でも、同業者としてテレビを見ていると、だいたいやりたいことが透けて見えますよね。あー、こういうことで企画通ったんだろうなあって。
 
丸山 あんまり僕の番組はみないでください(笑) 。


中野 透けて見えることによって、見る前にわかることがたくさんある。もちろん透けて見えない番組とかもあって、それはやっぱりすごく面白い。最初にみた『トリビアの泉』なんかはそうですね。全然透けて見えなくて、こんな面白いことよく思いついたなぁ、と。逆にタイトル見ただけでわかってしまうものってあるじゃないですか。そんなものばかりになるとどんどんどんどん見る気がなくなる。

 

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