完成形が全く予測できなかったこの企画。世の中に出て初めて評価された番組の質感と世界観。

週末のシンデレラ 世界!弾丸トラベラー

『週末のシンデレラ 世界!弾丸トラベラー』とは……日本テレビ系にて毎週土曜日23時30分~23時55分放送。毎週1人の女性タレントが、自身の願望を叶えようと最大1泊という“弾丸”な日程で海外旅行するバラエティ番組。スタジオMCに梨花、山崎静代(南海キャンディーズ)、中川翔子、ナレーションに天野ひろゆき(キャイ~ン)を迎え、旅の様子を明らかにしていく。

海外ロケだというのに同行スタッフは極少でカメラは1台、さらに最大でも現地に1泊という強行スケジュール。そこに映し出されるのは、旅を過ごす女性タレントたちの“素”の部分だ。海外旅行が珍しくもなくなった今の時代に、こうした旅の仕方を提案する理由はどこにあるのか? 番組を立ち上げたプロデューサーの千葉知紀氏(現・報道局プロデューサー)の「女性を元気づけたい」という想いが、番組誕生の根っこにあった。

  1. 時間は誰にも平等。それなら、ポジティブに消費したほうがいいんじゃない?
  2. 心の満足という部分では、終わりがない
  3. 面白い番組には「尖り」と「物語性」が不可欠

交通網の発達した現在、世界の裏側の郷土料理を食べて帰ってくるのも、1泊あればできてしまう。どんな希望も、週末を利用して達成できるんだ。日々のストレスでまいっているOLたちへ向けて、そんな希望のある話を「弾丸トラベラー」は提案する。 


―「弾丸トラベラー」が誕生した経緯はどういったものだったんでしょうか?

もともと土曜昼間を対象にした企画案として、この番組の演出担当の石村という若手Dのアイデアがありました。旅行するのは二人のタレントとカリスマ添乗員。男性一人のMCが架空の旅行代理店の店長役としてナビゲートしていくという企画書でしたが、形にはなっていなかったんですね。そこへ土曜の夜に、さらに若い女性=F1(女性20~34歳)をターゲットにした番組にしないか?という話があり、それから女性目線のコンセプトの番組へ企画変更していきました。当初の企画書
まず放送枠を考えてみると、若い女性の在宅率も高く、土曜の23時半ということで1週間の中で一番ゆったりできる時間なのではないかと考えました。それならば、来週の月曜日に向けて、エネルギーを与えられるような番組にするのがいいのではないかと。それで週末2日間の若い女性の過ごし方をリサーチしてみると「合コンで飲みすぎて、あっという間に終わった」「掃除して洗濯して海外のドラマDVD見ていただけ」というようなのが多かった。本当は週末リフレッシュしてもっと元気づけられるようなことを望んでいるんじゃないか……そこで、旅の目的を絞り込んだ一点豪華主義な海外旅行を提案したわけです。週末を利用すれば、どこか近場の温泉にいくことはできると誰もがわかっていますが、今の時代、同じ時間でも、ひとつの目的を絞り込めば、世界へと飛び出していける。金曜か月曜に休みが取れれば、最大4日間、現地1泊であれば、どこへでも行けるんです。そうしたことを実感できれば、仕事が始まる来週への活力になるんじゃないか、来週は新しい自分に生まれ変われるんじゃないか、ちょっとした勇気があれば一生の感動にできるんじゃないかと。時間って、誰にとっても平等に流れているものですよね。僕にとっての1秒と小杉さんにとっての1秒も物理的には同じです。世界中をみても生活環境や社会環境は異なるだろうけど、アメリカに居る誰かの24時間と僕にとっての24時間も、時間という単位では普遍的に変わらない。また、時間はお金と違って貯蓄することも節約することも出来ない。人が使う時間には限りがあるもの。誰にとっても時間の使い方って自分次第じゃないですか。貧富や環境の差はあるかもしれないけど、誰にとっても週末の過ごし方、24時間の過ごし方はその人によって変わるもの。それなら、ちょっとでもポジティブに時間を消費したほうがいいんじゃない?という提案なんです。男はゴロ寝したい気持ちもわかりますが(笑)、女性の方が楽しいことにどん欲なはず。きっとやりたいことをできる時間のほうが、充実しているはずです。
 

―これまでにもさまざまな旅行番組がありましたが、違いを意識されていますか?

そもそも海外旅行自体、珍しいことでもなくなりました。僕の年代でもそうでしたが、大学の卒業旅行で海外を回って、観光ガイドブックに載っているような表面だけの海外は、なんとなく一通り見知ることができるものです。
土日の昼間にやっているような特番が、それに近いかもしれませんね。複数のタレントが参加して、訪れた国や地域で抑えておきたい魅力を余すところなく紹介するような、観光旅行の延長線上にあるような内容です。
しかし私たちは、週末という限られた時間の中で最大限の楽しみを得られるようなスタイルにしなければなりません。目的を絞り、“弾丸”なスケジュールで。そのため、同行スタッフは極限にまで抑えており、弾丸旅行がうまくいくかどうかは、旅行するタレントさんの気持ち次第です。ある種、ドキュメンタリーと同じような手法を用いているんです。その点が、これまでの旅行番組と異なる点です。 

ただ気をつけたのが、“弾丸”旅行だからといって罰ゲームのような雰囲気やお笑いのドタバタにしないこと。ここが崩れてしまうと、自分の願望を達成するための旅というポジティブさがなくなってしまいます。また、罰ゲームだと視聴者と出演タレントの目線に上下の差が出てきてしまいますが、「弾丸トラベラー」はあくまでも同じ目線であってほしいんです。 


―視聴者でも実現できそうなステキな旅を展開されているのですね。

それには、弾丸トラベラーのタレントさん選びも重要です。従来の旅行番組もそうですが、みな“わかっている”リアクションですよね。でも、そうしたことを繰り返していると、視聴者から「どうせ台本があるんだろう」「これはテレビだから」と一歩引かれてしまいかねない。そうしたことからも、トラベラーは、単なる海外ロケというお仕事ではなく、「弾丸でもいいから、この目的なら是非行きたい!」という強いモチベーションがあるかどうか、が重要です。ポジティブなモチベーションがあるかないかで、トラベラーの表情や言葉に〝リアリティ〟が出てきます。そして、こちらが予想しない〝素〟の表情や言葉に、テレビの前の視聴者は「これはリアルだ」と感じ、弾丸トラベラーに共感してくれると思うからです。 

また毎回、トラベラーにはいろいろな体験をしてもらっていますが、どれもすべて本人が希望したこと。番組スタッフとの打ち合わせの前からの場合も、相談していくなかで思い描くようになった場合もありますが、いずれにせよトラベラー自らがやりたい!というモチベーションを持っていないと、ウソになってしまいますから。
撮影収録のスタイルにも工夫しています。例えば、普通海外ロケというとタレントさんにお付きのメイクやスタイリストが同行しますよね。制作側も、カメラマン、アシスタント、音声の3人1組を2組分派遣したり。でも僕らは「番組の撮影をしています」という雰囲気を現場で出したくはなく、純粋に一人旅をしているタレントさんのリアルな姿や表情を納めたいと考えています。そのためD/ADを除けば、基本的な撮影スタイルは、カメラマンは1人だけです。タレント同行スタッフも極力同行してもらわないようにしてもらっています。基本の移動は、公共の交通機関やタクシーです。普通、海外ロケだと、天気が悪いことやトラブルの発生を見越して予備日を置くものですが、それもありません。それだけリアルな表現にこだわっているということですね。「どうせテレビでしょ」と疑われると、“弾丸”のスケジュールで現地を回っていることも否定されかねませんし、旅先でのタレントの感想も真実と見てもらえなくなるかもしれませんし。 


―挑戦的な試みですね。

パイロット版の制作もありませんでしたから、正直1回目の収録が終わるまで、完成図が見えなくて、ドキドキしていました(笑)。第1回は、「フランスの世界遺産モン・サン・ミッシェルを空から見たい」というもので、長谷川理恵さんに出演いただきました。長谷川さんは前向きにリフレッシュできる旅行がしたいという話になり、打ち合わせの中で同テーマの計画ができあがったんですが、やっぱり最初ということもあり大変でした。番組内容を紙面の企画書でしか伝えられないというもどかしさですね。スタッフとも番組コンセプトを議論し、理解・共有し、その上で、スタッフがそれぞれ思い描くイメージ・映像含めた世界観をどう一つの形にしていくか、つまり「新しいものは、見えないもの。見えないものを、見える形にしていく。」ということですね。これは本当に大変でした。夜遅くまで会議、あーでもない、こーでもない、と(笑)。僕自身も、正直見えないことが多かったですね。弾丸という番組上の縛りが、制作体制含め続けていけるかなど。でも「新しいものは見えないもの。見えないものを、見える形にしよう。」と初回立ち上げまでの2か月間を共有してくれたスタッフには本当に今でも感謝しています。 

スタッフの努力が実を結んだなと思ったのは、第1回のロケVTRを見たとき。長谷川理恵さんは本心からのコメントをしてくれていて、彼女の感動がダイレクトに伝わってくるようでした。モンサンミッシェルを空から見た後、弾丸で帰る時間になり、「えっ、もう帰っちゃうの?」とコメントしていましたが、あれもすべて台本もない、リアルな言葉なんです。 この初回は、最も印象に残っている回でもあります。
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番組data
番組名 週末のシンデレラ 世界!弾丸トラベラー ジャンル バラエティ・音楽
放送局 日本テレビ(日本テレビ系)
放送日時 毎週土曜日 23時30分から23時55分
番組URL http://www.ntv.co.jp/dangan/
主なスタッフ プロデューサー・千葉知紀(07年末迄 現・報道局P)、演出・石村修司(敬称略) スタッフ数 約20人
主な出演者 梨花、山崎静代、中川翔子。ナレーター・天野ひろゆき(敬称略)
放送開始日 2007年10月

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