ロッカーに収められたVTRテープには、37年間の日本の歴史が刻まれている。

「NNNドキュメント」(日本テレビ系)

「NNNドキュメント」とは……毎週日曜日深夜、30分枠と55分枠の2パターンで放送。1970年1月4日に放送を開始し、日本のドキュメンタリー番組として最も長い歴史を持つ番組のひとつ。全国的に注目されている事象から地域性の強い問題まで、幅広いテーマを扱っているのが特徴。

ドキュメンタリー番組の草分け的存在であるNNNドキュメント。時代やテレビのあり方が変化する中、1970年の放送開始以来ドキュメンタリーという方法を貫き通し、放送回数は1900回を越えた。長い年月、支持を得ている理由や制作理念などを、プロデューサーの智片健二氏に伺う。

  1. さまざまな軋轢が社会問題となって噴出する時代で、いわば必然性をもって誕生した番組ですね
  2. ベトナム難民の話は、撮影に23年かかりました
  3. 変わっていく時代、変わらない時代、それを記録する

1960年代、日本は高度経済成長や学生運動など激動の時代を迎えていた。戦後の価値観が大きく変わっていく時代、社会矛盾が激化する中で、NNNドキュメントは誕生する。


─1970年1月に放送が始まり、2007年12月現在で1900回を越え、ドキュメンタリーとして最も長寿な番組となりました。当初、どのような趣旨や目的で放送を開始されたのでしょうか。

「NNNドキュメント」が始まる前にも、「ノンフィクション劇場」などの社会派ドキュメンタリー番組がありました。60年代以降、高度経済成長や学生運動など、日本の社会情勢は激動の時代を迎えますが、そうした時代を映像としてとらえ問題提起したいという気運のなかで、「NNNドキュメント」がはじまりました。戦後の価値観が大きく変貌し、さまざまな軋轢が社会問題となって噴出する時代で、いわば必然性をもって誕生した番組ですね。


─歴史ある番組を継承していくことで何か感じるものはありますか?

番組が長い歴史の中で何をやってきたかということは、常に頭の片隅に置くようにしています。それぞれの時代に、人々が何に目を向けてきたのかを意識することで、その時代に人が何に関心を持ち、疑問に感じ、うれしく思い、怒ったのかを、現在との比較の中で考えることができます。人間が強い感情を持つ点は時代が変わっても同じだと思いますから。 


─扱っているテーマですが、速報性のあるものよりも、普遍的な事象を取り扱ったものが多いようですが。

デイリーの報道番組は速報性の高いニュースを毎日追いかけます。一方、ウィークリーの報道番組は「1週間おき」のリズムがあります。当番組はウィークリーの番組ですが、感覚的には数ヶ月から数年単位の大きなうねりを持っているものも多いと思います。テーマのうねりの中で、人々の関心が高いもの、大事にしなくてはいけないもの、忘れかけているようなものをとり上げる。目先の動きにとらわれてテーマを絞っていくような意識はありません。
たとえばひとつの事件・事故があった場合、ストレートニュースはすばやくその現象の部分を伝えるのが役割ですが、当番組ではなぜその事件・事故が起きたのかという、問題の背後にある部分を深く掘り下げ、当事者や関係者が何を考え、感じたのかを描き、その中で問題提起したいという気持ちがあります。
ストレートニュースで対応したほうがよいテーマをいちいち扱おうとは考えていませんが、社会的に大きな意義があるなら別です。いざというときにはパッと差し替えで放送しますので、必ずしも速報性を追わないということではありません。「今、何を伝えなければならないか」というのが重要なのだと思います。


─時代の変化は、事件や事象そのものの性質も変えていくと思うのですが、番組で取り上げるテーマにも変化があるのでしょうか。

変化はあるかもしれませんね。例えば70~80年代には、行政の不正、政治腐敗、公害、核問題、戦争など、社会が直面する問題そのものを数多く取り上げてきました。現在では、もちろんそうしたテーマも取り扱いますが、比重としては親子の絆や夫婦のあり方、人の生死といったテーマの比重が高まっているように思います。今の時代だからこそというテーマもあります。若年層が抱える性や出産の問題、生殖医療の発達と同時に顕在化しつつある生命倫理や生殖ビジネスの問題、高齢化にともなう問題などです。これらはかつては存在しなかった社会問題です。
また「一テレビ会社」という側面からみれば、「NNNドキュメント」は、かつては社会派ドキュメンタリーで勝負するという雰囲気がありましたが、年々ドキュメンタリー番組全体の数が減ってきておりますので、より広範囲のテーマを当番組で引き受けてゆかねばという意識もあります。 視聴者の反響を見ますと、貧困や医療に関わる問題など、今日的な社会問題を深く掘り下げた調査報道的な番組は常に関心が高いようです。あとは、社会の病気に関するもの…クスリの過剰摂取、リストカット、ネット依存といった若者が直面するテーマも反響が大きいですね。


 ─同じテーマを複数回取り上げることもあるようですが。

例えば原爆をテーマにしたものは、番組開始以来、毎年放送しています。しかし、同じ「原爆」でも、切り口が一本一本違います。今年の場合、原爆投下後10年間はGHQの指示により、原爆に関する医学的情報が一切公開されなかったのですが、そのために蔓延した偏見や差別などを描きました。その10年間に何が起き、何故そうなったのかという部分にスポットを当てたもので、そうした切り口ではこれまで一度も描いてこなかった空白の部分です。同じように見えるテーマでも、丹念に探していくと、まだ見たことのない部分を発見できます。 今後はさらに、食料やエネルギー問題、命って何だろう、何のために生まれるのかといった生命倫理、家族ってなんだろうというような人間のあり方を問うテーマに、年数をかけてじっくりと取り組んでいきたいと考えています。
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番組data
番組名 NNNドキュメント ジャンル その他
放送局 日本テレビ放送網(日本テレビ系)
放送日時 毎週日曜日 24時50分から
番組URL http://www.ntv.co.jp/document/
主なスタッフ プロデューサー・智片健二、日本テレビ系各社(敬称略) スタッフ数  
主な出演者  
放送開始日 1970年1月(2007で37年)

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