難しい科学や普段馴染みのない物理の法則を、とてつもなく大きな仕掛けで解り易く目で見て理解ができる。

大科学実験 discover science

『大科学実験』とは……

「音の速さを見てみよう」「空飛ぶクジラ」「コップは力持ち」「太陽で料理しよう」「高速で止まるボール!?」「リンゴは動きたくない!?」「人力発電メリーゴーランド」「声でコップが割れる?」 「大追跡!巨大影の7時間」「象の重さは!?」「卵の上に立つラクダ」……見たいでしょ? 今回の文中では、それぞれの実験内容をさほど明らかにはしない。番組ウェブサイトに行けばフルで見られるから。ここでは、ワクワク感が尋常ではないタイトルの秘密と実際の実験の背景が語られる 
  

——森さんがソーラーバルーンで空を飛んだのは、自分が飛びたかった?象04

最初はスタントさんを探したんですよ。でもスタントの会社に「自分たちで作ったエアバルーンで持ち上げられたときの危険性」を説明しても通じなかった(笑)。保険会社にも「そういう保険はない」と言われて(笑)。ロケの1週間前になって、スタッフが「やっぱり森さんだと思うんですよね」って言ってきたんです。「私もいろいろ考えたけど、そうだと思うよ」って(笑)。制作スタッフは外部の方だし、何かあったら責任とるのは私だし、私が乗るのが一番いいかと。

——プロデューサーは何から何まで大変ですね。でも、危なかったですね。画面でも、バルーンの後ろの方がめくれ上がっているのがわかりました。

最後、クジラのお尻が破けたんですよ。私は前の方に乗っているから、後ろで何が起きているのかわからない。後ろの人は叫んでいたらしいんです。「もう危ない~」って。でも全長50mで後ろの方で言っているから、前の方で私を飛ばす作業に従事している人たちは「なんかいっているなあ~」っていうぐらいの認識で。ようやく後ろの人が走ってきて、破けていることを知らされました。でも事態をあんまり把握してなかったんです。ちゃんと撮れているかどうかだけが気になっていたので、「撮れた? ダメならもう1回飛ぶよ」って言うと、デレクターは「もう止めます、下りてください!」って。で、インカムとかカメラとかハーネス外すのに手間取って、全部取り外した瞬間にクジラ、ワ~ッて飛んでいったんです、ハーネスと共に。後ろの人たちは私がクジラから離れたのを見てないから、飛んでくクジラを見て、「あ……森さんが……」って思ったみたい(笑)。
卵の上に立つラクダ
——命がけじゃないですか!

監修の方に、「番組の責任者として自覚がなさ過ぎる!」って叱られました・・・。 
  
——もしかしたら、ある程度失敗することを前提に作ってますか?

そうですね、教育的なことも考えて試行錯誤の過程も見せていこうと思っています。私たちは「失敗シーンを撮る」「成功シーンを撮る」っていう言い方をしていまラクダ 卵1す。「卵の上に立つラクダ」(※3)のときも、1回成功シーンを撮ってから、失敗したシーンを撮るつもりだったんですが、ジャクソンくん……あ、ラクダです、彼を乗せて卵の上に降ろす装置が動かなくなっちゃったんですね。それで収録時間が押しちゃったのと、彼が動いて重心がずれて卵が全部潰れちゃって、そこで終わっちゃいました。人間ならば卵を潰さないように重心をコントロールしてくれますけど、ラクダにそれを望むのは酷ですよね(笑)。 
  

——ラクダ装置といい、結構いろんな機材をこのために作ったり使ったりしていますね。

クジラはもちろん作りましたし。“音の速さ”の最後に音の力登場したビッグホーンも作りましたね。トラック用のホーンにエアコンプレッサーをつないだ、勢いよく音を出せる装置です。あとは「忍者になろう」という回で、電磁石靴と電磁石グローブを作りました。これをはめて鉄の壁を上っていこうという趣旨ですね。 


——そういえば、「コップは力持ち」のときには、でっかいコップを作っていましたね。

いいのがなかったんですよ。直径が16㎝あって、力士をちゃんと吊り上げられるのに適したコップが(笑)。予備実験のときには、どこか高いメーカーのものを使っていたらしいんですが、10個ぐらいは割っているかなぁ。結局作った方が安上がりだったような記憶があります。いやぁでも、コップによって割れ方が違うんですよね。このときにはコップにもいろいろあるんだなぁということがわかりました(笑)。

——まさに科学の目ですね。ただ、オーダーして作っているのにわざわざコップにこだわることが大切なんですよね? よくわからない実験器具じゃなくて、普段から使っているものが重要というか……。

そうですね。実験に使うものは、どこかなにか身近なものでありたいと思っています。できるだけ自分たちの手を動かして作った道具だったり、見つけた素材だったりしたいんです。このときの実験は大気圧を調べるものだったんですが、別にコップと力士じゃなくても同じ現象を見ることはできます。でも身近なものからつなげていかないと、「科学って自分たちの生活から切り離されていて、もの凄く偉い研究者が特殊なことをやることなんだ」って、子どもたちが認識しかねません。科学は身近にある自然や現象に対して“なんでこうなるんだろう?”って思うところから始まるものですから。

——コップだからわかりやすいわけですね。

タイトルもすごく大切だと思っているんです。「コップは力持ち」……自分で付けたんですけど、すごく気に入っています(笑)。たいていはデレクターと相談して名付けるんですね。タイトルってギャップがあると面白い。普通、コップには「力持ち」っていう形容は当てはまらないんですよね。「コップは力持ち」って言われたら、何をやるんだろうって思いませんか? そこにエンタテインメント性があると思うんです。だからコップに力持ちになってもらいたかった。本当のことをいうと、この実験は「大気圧は力持ち」なんですよね。でも“大気圧”って子どもにとってお友だち的存在じゃないじゃないですか(笑)。コップの方がやっぱり近い。

——実験を失敗し、収録を中止したことってありますか?

glass2録を中止したということはないですね。静電気で絵を描く……コピーの理屈を応用した実験があるんですけど。静電気を発生させる帯電ガンというものがありまして、これを使って紙に帯電させ、トナーを流すとそこだけ黒くなるという仕組みです。予備実験では帯電ガン1丁でやってうまくいったんですが、本番3丁でやると、ひとつはうまく描けるのに、残りふたつがネガポジ反転しちゃったことがありました。こんなときでも、その回でご協力いただいていたコピー機の会社と、帯電ガンを作った会社の専門家たちが頭をつきあわせて、なんとか収録中に解決策を捻り出してくれました。失敗したまま終わったのは「声でグラスを割る」だけかな。割れなかったですから(笑)。 
  

——どれだけ予備実験をやっても失敗するときはするんですね。

でもそれはそれで全然構わないんです。失敗したことを見せればいいと思っていますから。最近は、実験が成功することに麻痺していますね。当たり前のように思えている。こんなのホントはうまくいくかどうかわからないんですよ。頭や机上ではわかります。でも現場だと……たとえば“音の速さ”のときだって、本当に1.7㎞先に音が届くのかとか、音を聴いてきちんと旗を揚げてくれるのかなんて、やるまでわからないんですよ。これが最初のロケだったんですが、1.7㎞のいちばん端のところにデレクターと一緒に立っていて、向こうから徐々に旗が揚がってくるのが見えて。でも音は聞こえていなくて。音が自分のところまでパーンって届くと同時に目の前の人がパッて旗を揚げたときには、ホントにうれしかったですね。「本当にきちんとこうなってくれるんだ!」って。たぶん、毎回毎回実験成功するたび、スタッフが一番喜んでいると思いますよ。

※3:500個の卵の上に体重700kgのラクダ・ジャクソンくんを載せ、体重の分散を見る実験
※4:巨大なコップを大気圧でアクリル板に吸い付かせ、その力で力士を持ち上げる実験




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番組data
番組名 大科学実験 discover science ジャンル その他
放送局 日本放送協会、アル・ジャジーラ子どもチャンネル(国際共同制作)
放送日時 毎週水曜 午後7時40分から7時50分
毎週金曜 午前10時45分から10時55分
番組URL  http://www.nhk.or.jp/daijikken/
           http://www.daikagaku.jp/ 
主なスタッフ 実験監修・NPO法人ガリレオ工房(瀧川洋二理事長)(敬称略)
総合演出 寺嶋章之(ビヨゴンピクチャーズ)
スタッフ数  16名(実験により100名ほどにもなる)
主な出演者 ナレーション・細野晴臣(敬称略)
放送開始日 2010年4月

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