ボールが止まっている瞬間。その場面もカメラは写し続けている。

元気を日本に 日本プロ野球2010

『日本プロ野球』とは……

視聴率の低下が叫ばれている一方、野球を楽しむ子どもの割合は決して減っていない。大人だけでなく、子どもも楽しめる番組作りを目指すことが、将来的な野球人気の復活に大きな影響を与えるかもしれない。なにより、野球選手が子どもたちにとっての憧れである事実は、今も昔も変わっていない。 


─例えば2010年の中継なら、準備はいつ頃からになりますか?


年間の資料をまとめるのは、前年の12月です。日本シリーズや、その後の事務処理的なことが11月まで続くので、野球担当のプロデューサーが一番時間が取れるのは12月なんですよ。その1カ月間は大きな仕事はないので、野球のことばかり考えられます。ただ資料をまとめるのはこの月ですが、素材や制作案の収集は365日いつでもじゃないですかね。通勤途中で思いついたアイデアを手帳に書き記しておくことも多いです。 


─今までで最も印象に残っている試合は?

2008年、巨人と西武が戦った日本シリーズの最終第7戦ですね。3勝3敗のイーブンできていて、優勝を左右する一戦。2対1と巨人がリードして迎えた8回、抑えの上原がベンチにいない巨人は越智を登板させたんですが、先頭打者にデッドボールを与えてしまうんです。その後一死三塁になり、3番打者の中島選手に内野ゴロを打たれ、その隙に同点にされてしまいます。続く平尾選手には逆転打を浴び、結局巨人は2対3で負け、優勝を土壇場で逃してしまいました。 当時、三塁あたりに全体を俯瞰するハイサードというカメラを置いていたのですが、中島選手が内野ゴロを打ったとき、そのカメラに全部映っていたんですよ。決意してホームへ突っ込む片岡選手、すばやくボールを処理しようとする小笠原選手、そして必死に一塁へ駆ける中島選手。外野フライで1点入る場面ですが、中島選手は脇腹を痛めていて、外野まで運ぶのは難しかったんです。当然それを知っている巨人バッテリーは、さらに打ちづらい内角を攻めてくる。それなら強い打球を叩きつければ、その隙に三塁ランナーが帰ってこられるかもしれないと中島選手は考えた。片岡選手も十分考えていて、打ったと同時にスタートをきっている。そのような選手の意思までもが伝わるシーンを撮れたというのは、すごくうれしかったですね。この試合をしっかり表現できたと思い、その意味でも印象深い一戦でした。 


─中継が難しい試合というのはどんなことでしょうか?


一番難しいのは、点が入らない展開。解説者やアナウンサー、ディレクターの腕が試されますね。ペナントレース終盤であれば話は別ですが、特に6~7月など、一試合一試合にシーズンを左右する負荷がかかっていないときにそのような展開だと、すごく難しいです。 


─他のスポーツと比べての違いを感じる点は?
 

ベンチ一回一回ボールが止まりますので、戦略・戦術がすごくわかりますし、それを映像で表現する時間があります。囲碁や将棋みたいな感じで、布石からすべてわかりますね。サッカーは常にボールが動いていますから、ある選手がいい動きをしていても、それにカメラを合わせることはできません。いつ攻守が交代するかわかりませんから、常にボールを中心に撮らざるを得ない。その点、野球は予期しないうちに点が入るようなことはありませんから。選手やベンチの考え方を表現してストーリーを構築し、視聴者にいろいろことを予測させられるスポーツ。きっと野球ファンも、そうした点に魅力を感じているのだと思います。 本当はイニングの変わり目こそ、さっきのプレーはこういう意図があったとか、あそこが素晴らしかったとか、たくさんの話題があるのですが、CMに入ってしまいますので、解説者も苦労するところです。CM明けだと、もう次の攻撃が始まっていますからね。 


─地上波では試合の途中から番組がはじまり、試合が終わる前に放送終了時刻を迎えてしまう場合もありますが、その点での苦労は?

そこは民放ということで、致し方ない部分だと考えています。特に苦労するのは、CMの入れ方ですね。攻守交代の間だけでよければ簡単なのですが、それだけだと放送すべきCM量を消化できず、どこかで挟み込まなくてはならないんです。それをどうやってこなすかは、局ごとの特色が現れる部分ですね。日本テレビの場合、しっかり試合の状況を伝えられるよう、試合の展開に考慮して得点の入る可能性の低いところ、あるいは入っても試合全体の流れに影響が少ないところで順次CMを入れるようにしています。あくまで確率の問題にはなるのですが、特に勝負の行方を左右する可能性のある場面には、CMを入れません。 CMやVTRの指示はスイッチングするディレクターの後ろにいるチーフディレクターが行っていて、センスや腕前が問われる部分でもありますね。どこでCMを入れるかで、その人の野球観というのもわかったりしますよ。 


─今後の展望をお聞かせください。


なかなか視聴率が上がっていかない状況ですが、たぶん今留意すべきは、子どもたちだと思っています。スポンサーニーズの高い30歳前後の視聴率が奮わないのは、子供時代に野球を見て育っていないからだと思うんですよね。野球よりも、サッカーが盛り上がっていた時代でしたから。近年ではワールド・ベースボール・クラシックでの日本の連覇もあり、野球をする子どもの数が増えています。各球団もそこに注目し、デーゲームを増やして子どもたちに球場へ足を運んでもらえるように努力をしています。テレビメディアもその流れに沿えば、彼らが20代、30代になったとき、野球人気も高まるんじゃないかと思います。たとえばデーゲームなら、子どもたちの様子をなるべく多く撮るようにして、楽しんでいる姿を伝えるようにしています。ウルトラスーパースローという映像を使い、どうやって足を上げているのか、変化球を投げているのか、学べるように解説したりと。ただ、番組のレベルを下げて子ども向けに落とし込んだりはしません。野球の知識や理解を深め、興味を増していくには、目指すところがちょっと高いところにあったほうがいいと思いますから。これまで通り大人が楽しめ、かつ子どもの興味をかきたてるきっかけも与えられるよう、工夫していきたいですね。 スポーツは嘘をつかないのがいいですよね。怪獣を倒すヒーローになりたいといっても現実的に不可能ですが、イチローになりたいと思ったら、誰にでもなれる可能性はあるわけじゃないですか。そういう意味では、野球中継に映っている選手は、リアルな目標となる人たちばかりであり、夢のある番組なんだと思いますね。



powered by Yahoo!
    JAPAN

 

ご感想をお寄せください

当フォームより、ご意見・ご感想をお寄せください。
いただいたご意見・ご感想は番組制作者へお届けする場合がございます。

ご感想を入力
番組data
番組名 元気を日本に 日本プロ野球2010 ジャンル スポーツ
放送局 日本テレビ放送網
放送日時 19時から20時54分
番組URL http://www.ntv.co.jp/baseball/index.html
主なスタッフ チーフプロデューサー・高橋知也、プロデューサー・岡田謙吾 スタッフ数 約15名
主な出演者 解説者・山本浩二、堀内恒夫、池谷公二郎、中畑清、江川卓、
水野雄仁、清水崇行など(敬称略)
放送開始日 1953年8月(2010年で57年)

最新のインタビュー