ボールが止まっている瞬間。その場面もカメラは写し続けている。

元気を日本に 日本プロ野球2010

『日本プロ野球』とは……

その日に行われる試合をわかりやすく伝えるには、ディレクター、実況アナ、解説者の三者の意思疎通が図れていないといけない。しつこいくらいに会議を開いて意見を通わせ、時にぶつかりながら、準備を整えていく。それが関係者の知識を高め、番組の品質を向上させていく。 


─番組名は「日本プロ野球」と、ど真ん中のタイトルにしている理由は?


基本的にタイトル名は、巨人の監督が変わるタイミングで変更されています。2009年の「PRIDE&SPIRIT 日本プロ野球2009」は、前任者が考えた名称を引き継いでいますが、2006年に原監督が就任されてから続いていて、直前に行われたワールド・ベースボール・クラシックで日本が初代王者に輝き、世界に日本の野球を知らしめたことも、そのタイトルに影響を与えたんじゃないかと思います。日本野球の誇りを感じる素晴らしいタイトルだと思っていますので、今年もこの「日本プロ野球」を根幹に据えつつ、さらに読売・巨人と野球の共通テーマにかかげている「元気を日本に」というスローガンを添えて、「元気を日本に 日本プロ野球2010」としました。 


─制作スタッフの規模は?

カメラの台数でいったら、日本テレビは決して多くないと思います。スローVTRの数も他局さんに比べ少ないですし。長年の積み重ねがありますから、その少ない台数でもきちんと表現できると考えています。年間の制作本数がとても多いですから、一試合一試合にそれほど多くの人員や予算をかけられないということもあります。 制作の人数は、ざっくりいって毎試合15名ほどでしょうか。現場へは8人、残りは本社で対応します。 


─野球の中継は、どのようなスタッフたちによって支えられているんでしょうか?例えば、カウントをつけるスコアラーのような役目までもがいるんでしょうか?


次回に実況する予定のアナウンサーがスコアをとり、その日の実況アナや解説者に情報をふるようにしています。一時はアルバイトを雇っていたこともあったのですが、アナウンサー自身がやるほうが勉強になるんですよね。スコアを見ながら、解説者が話したい内容をフォローしたり、他アナウンサーの実況の流れを理解したり。 また、サブコントロール室のディレクターの横には、学生アルバイトのスコアラーがいます。日本テレビの場合、ディレクターがスイッチャーも兼ねているため、試合の内容を完璧には追えなくなってしまいます。前の打席結果とか、ピッチャー交代の可能性はあるのかなど、局面局面で試合の組み立てを確認するにはスコアラーの存在が重要。ピッチャー交代の可能性があるならブルペンやベンチを映したりして、試合の駆け引きを表現できます。 


─実況や解説で気をつけている点は?

プレイボールの2時間前に、解説者を交えての全体会議を30分ほど開きます。そこまでしっかり時間を割いているのは、私たちだけかもしれませんね。毎回アナウンサーや解説者に伝えているのは、グラウンドに集中してくださいということ。そこで起こっていることをきちんと表現してほしいということです。かなり大変で疲れることなのですが、それが野球の面白さを伝える一番の方法ですから。また、ディレクターの考えや、アナウンサーが取材して発見した情報、解説者からは今日の見どころといった話を出し合い、意思疎通を行います。この三者で認識にズレがあると、番組もチグハグになってしまいますからね。そのほか、「『ボールのキレがいい』って言いますけど、キレって何ですかね?」とかマニアックな会話も飛び出し、野球の知識や奥深さを学べる場になっています。 実況アナウンサーに御願いしているのは、解説者のいう話をすべて理解した上で耳を傾けるということ。解説者の野球観を理解していれば、それを引き出すような質問もできますから。また、自分でわかって納得しないようにとも言っています。解説者の話に「そうですね」と返答せずに、「そうですか」と返してみる。「そうですね」で納得してしまうと話が終わってしまいますが、「そうですか」なら、さらにつっこんだ話も解説者から引き出せます。細かい話ですが、そうしたところがけっこう重要だと考えています。 解説者には、評論家にならないでくださいといっています。評論家は結果に対して評論する人。解説者は、今おきていることに対して、その要因や理由を紐解く人。結果だけを追った評論は中継番組に不要ですから、そこは気を付けてもらっています。 


─特殊なカメラの設置など、撮影機材での変化はありますか?

ダイヤモンドビジョン位置
ハイビジョンカメラはもう何年も使っていますし、特定の人物だけを追うようなカメラもありませんが、選手の一挙一動の姿やその瞬間の表情などをとらえるためにウルトラスーパースローを活用しています。1プレーに潜むスポーツの楽しさや、選手の美しさがすごく よく見えるんです。  また、2009年からはダイヤモンドビジョンと名付けたカメラを導入しました。球場を真俯瞰から広範囲に捉えた固定カメラで、過去にも置いたことのあるカメラですが、名前をつけたところがミソ。これはディレクターのアイデアですが、名前をつけたことによって、よりその演出意図を明確に伝えることができるようになりました。ダイヤモンドビジョンでは、グランドの動きを一望でき、守備位置や走者の動きがよくわかります。打球が飛んだとき、それに一番近い野手だけでなく、選手全体の動きが把握できます。1プレー1プレーに潜む野球の奥深さを余すところ無く表現ができるようになりました。この発想の元は、ハイサードというカメラにありました。三塁上のクロススプレーなど迫力ある映像を狙って置いたのですが、使ってみると意外にグラウンドの裏側を映し出していることに気づいたんです。そこでグラウンドの全体の動きがわかる映像として活用してみました。 このハイサードカメラの進化系がダイヤモンドビジョンで、より全体を見通せる位置に置きました。また、これは日本テレビ全番組の話ですが、2010年7月5日から、4:3のテレビの場合でも上下に黒帯が入って16:9で表示されるレターボックス映像になります。これまでは両サイドがカットされることを考慮しての4:3の画角でしたが、これから16:9の画角でやっていけます。上下にあったムダを切って情報を詰めることができ、もっと臨場感のある映像を表現できそうです。 


─新しい技術でいうと、3Dテレビなどが話題を集めていますが役に立ちそうですか?


日本テレビでもすでに研修など始めています。野球を3Dで放送しようとすると、たぶん僕らが目指している野球中継番組とはまったく違うものになるんだろうなと思って、興味深いですね。3D画面は奥行き感を出し、臨場感を第一に伝えようとしますから、野球をシンプルにわかりやすく伝えようとする今の番組とは、方向性が異なります。どっちを選ぶかは視聴者ですから、視聴者が3Dを選んだときはそれにあう表現方法を盛り込んでいくようになると思います。きっと、今の野球中継とはまた違った野球の魅力を引き出せるようになるでしょうね。野球中継のパイオニアとして3Dの野球中継を構築する使命はもちろん感じています。ただ今現在は、僕らが表現しているもののほうが、数多くの共感を得られると思ってやっています。 


─シーズンオフにキャンプを取材することは、今季の選手の調整具合をみることで制作方針を考えようとするためですか?

あくまで素人ですから、選手の仕上がりまではわかりませんが、そのチームが今年どういう野球を実践しようとしているかとか、話題になりそうな事柄は見えてきます。ただ僕の場合は、映像制作の組み立てというよりも、シーズンに入る前のご挨拶という意味合いが強いのですが。各球団関係者とは、野球界をどうやって盛りあげようかと、少し大きな話もしていますね。



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番組data
番組名 元気を日本に 日本プロ野球2010 ジャンル スポーツ
放送局 日本テレビ放送網
放送日時 19時から20時54分
番組URL http://www.ntv.co.jp/baseball/index.html
主なスタッフ チーフプロデューサー・高橋知也、プロデューサー・岡田謙吾 スタッフ数 約15名
主な出演者 解説者・山本浩二、堀内恒夫、池谷公二郎、中畑清、江川卓、
水野雄仁、清水崇行など(敬称略)
放送開始日 1953年8月(2010年で57年)

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