操演者の手にかかると、まるで生きているが如く表情が出てくる

新・三銃士

『新・三銃士』とは……

ライバル視……というのとは少し違うかもしれないが、脚本と演出との間にも、やりあうような関係ができているのだ。普通の人形劇ならきっとやらないことを発想し、書き、実現する。とんでもないところにボールを投げ、それを受け取る手段をみんなで考える。という、21世紀に改めて人形劇を復活させた意義の話。

——1本撮るのにどのくらいかかるんですか?

緑山で今やってる収録のスケジュールは、だいたい大河ドラマなんかでもそうだけど、1日で何分撮れるかって計算しています。そこは、実はドラマとおんなじ尺…4日で40分ですね。だから1日10分を目標にしてます。ただ、そこをこぼれているので、今はドラマよりも時間がかかってることになりますね。

——そんなにかかるんですか!?

人形劇って、1体の人形を2~3人で操っているんですね。しかもセットの“蹴込み”の下で屈んで、足下のモニターを観ながら操っている。だからたとえば4人が会話するときにも、下には10人以上の操演さんがいて、彼らの呼吸が合わないとシーンが成立しないんですよね。それでテイク数が増えてしまう。 
   
——5話に、銃士たちと親衛隊が噴水広場で大立ち収録風景回りをするシーンがありましたが、あれはすごい人数ですね 

あれはね、しっかり作ってある人形はメインの5、6人です。親衛隊の人たちは“ヒラメ人形”と言われる、人型に切り抜いた紙に棒をくっつけて操ってるんです。夜のシーンだし背後にヒラメがいても大丈夫。1人で2体ぐらい操れるので、人数的にもまぁそれほどでもないですね。一番たくさん人がいるシーンで、操演さんが20人ぐらいでしょうか。でも立派に大乱闘シーンにみえるでしょ。そこが知恵と技です。

——この人形劇って、普通のドラマ的な演出が多いですね。

「ドラマみたいに」っていうことは意識してないです。人形にしかできないこと、人形だからこそできることを念頭に、いかにして面白く観てもらうかということを演出家は考えてます。

——ただ、過去の人形劇では考えられないようなシーンがいっぱいあるんですけど。基本、人形劇って下からワイヤーで操るから床がないですよね。なのに俯瞰で撮ったり、吊り橋の上に人形を配したり…。

そこについては意識的にやってる部分があります。ひとつには、いま人形劇をやったときに“何が新しいか”。ひとつにはハイビジョンでやるということ。すべてが見える中でどこまでできるのか。“逆に人形劇のタブーに手をつける=吊橋新しいものが生まれる”という発想ですね。それを一番やりたがったのは三谷さん。だからそういうものを書いていらっしゃるんです。それがたとえば吊り橋のシーン。三谷さんに最初、人形劇ゆえの制限について聞かれたんです。実は僕もその辺を知らなかったこともあり、「自由に書いてください」と(笑)。それをみんなで試行錯誤すれば、いいアイデアが出てびっくりするようなものができるかもしれないとも思ってたんですけどね。それで始めてみたら、俯瞰はあるわ、吊り橋はあるわ、ワンカメ長回しはあるわ……。 


——長回しって大変なんですか?

大変です(笑)。たとえば20話は、舞踏会のシーンだけで20分。ワンカメ長まわしカットが多いんですが…。まず、カメラを振るので、見切れないようにある程度広いセットじゃないとできない。そこに、キャラクターが次々出入りする。操演って、あるキャラクターを誰がやるかが決まっているし、複数キャラクターを掛け持ちしている場合もあるんです。AとBを同じ操演がやってるとき、AがはけてBが入ってくるとしたら、今Aとともに出ていった操演さんが、すぐBに持ち帰って入って来なきゃならない。1人でもNGを出したら最初から撮り直し。非常にリスクの高い撮影です。でも、20話はすばらしくいい画が撮れてます。最初、三谷さんは「20分全部行きますか」って。さすがにそれは無理でしたけどね(笑)。

——そういう「今回は長回しをテーマに」みたいな提案があるんですか?

それは打ち合わせで決めます。吊り橋をやりたがったのは三谷さん。長回しとかミュージカルは、演出グループがやってみたいと。人形劇経験のあるディレクターが、いま何人かついてますんで、みんな新しいことをやりたがるんですね。やりたいことを出し合って、プロットと見比べながら「じゃあ○○話にできるね」って。そのアイデアを提案したディレクターが担当する回に合わせて三谷さんが書いてきたり。そういう面白いやり方」

——そこは普通のドラマとは大いに違いますね。

「こういうことにチャレンジしたい」という意欲と、ストーリーが合致するような形で展開してますね。

——お気に入りのシーンは? 舞踏会/吊橋

 うーん、毎回必ずいいシーンがあるんですよね。やっぱり16話の吊り橋、20話の舞踏会はすごく挑戦的だったということと、従来の人形劇ではなされなかったことが、ふんだんに取り入れられてますから。そして、ふたつともワンシーンで20分もたせてるんです。脚本・演出、それを支える照明・・美術・技術さんのすごさが垣間見える。それ以外にももちろん毎回みんながんばっててすごいと思うんですけど。それと、30話以降にやるミュージカル。歌は録りました。みんなちゃんと人形の声で歌っていて、これはすばらしいです。展開としては、21話以降が好きですね。20話までは、王妃の首飾りを巡る活劇。原作に忠実なんです。それ以降は原作から少し離れていきます。ひとつ大きな戦争を通して、みんなの心が散り散りになったりまた固まったり。それで成長したり。登場人物たちの心の動きを追っていく、そこがお話としては面白いですね。 
  

——さて、“復活”と謳われていますが、今年以降、人形劇はどうなるんでしょう?

労力がかかることはわかりましたが、得たものも本当に大きかったです。今年、新作を作ることはまずないと思いますが、実は4月から、総合テレビで朝、放送することが決まりました。この作品でノウハウは積み上げたし、人形劇の新しいファン層も生まれたと思います。「親子で観てます」という声も聞きますし、家族団らんを生み出す作品にもなっていることは自負してます。それを壊したくはないんですね。だから必ず、次の作品をやりたいとは思ってる。なるべくやる方向で現場は考えてます。三谷さんもお忙しい方なんで、どうなるかはわかりませんが、ひとまず2010年12月までは、いまの『新・三銃士』をずっと観ていただくことができるようにはなりました。他にもいろいろな展開は考えてるんですけどね。



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番組data
番組名 新・三銃士 ジャンル その他
放送局 日本放送協会
放送日時 教育テレビ
第1話~5話   10月12日~10月16日  18時から18時20分
第6話~10話 10月19日~10月23日  18時から18時20分
第11話~40話 毎週金曜 10月30日~平成22年5月28日 18時から18時20分
番組URL http://www.nhk.or.jp/sanjushi/index.html
主なスタッフ チーフ・プロデューサー・紀平延久(敬称略) スタッフ数 約100人
主な出演者 脚色・三谷幸喜 語り・田中裕二(爆笑問題)
ダルタニアン役・池松壮亮、アラミス役 他・江原正士、コンスタンス役 他・貫地谷しほり、アンヌ王妃役 他・瀬戸カトリーヌ、ポルトス役 他・高木渉、ミレディー役 他・戸田恵子、アトス役 他・山寺宏一、ベルトラン役・西田敏之、操演・スタジオ・ノーヴァ (敬称略)
放送開始日 2009年10月12日

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