操演者の手にかかると、まるで生きているが如く表情が出てくる

新・三銃士

『新・三銃士』とは……

収録スタジオにもお邪魔した。180坪の敷地に、高さ5メー  トル、幅十数メートルの巨大な渓谷のセット。全体にうっすらとモヤがかかる。人形小道具をズラリと並べた基地、本番収録の傍らでは、出番待ちの人形を操る練習。操演・小道具・照明・美術・技術が、それぞれの職人の目を光らせている。(カット:それぞれをライバル視だスタジオ/井上文太が)目指すところはみな同じ。より面白く、よりすばらしく。 
  


——人形に当て書きって、具体的にはどういう作業なんですか?

デザイン段階から、かなり参加してもらったんです。僕とキャラクターデザインの井上文太さんとで、性格とかも綿密に決めてキャラクターをデザインするんです。それを三谷さんにお見せして意見を聞く。そうやって顔を決め込んでいきつつ、平行してキャストも決めていきました。三谷さんからは、この映画のこのシーンのこの役者のイメージといったような、本当に具体的なリクエストが沢山ありました。結果、三谷さん曰く「自分がこれまでやって来た中で一番のキャスティングができてる」と。だって、思った顔が作れるわけですからね。顔だけじゃなく背の高さも全身のバランスも全部。生身の俳優さんなら、こうはいかないでしょ? 声優さんが決まった段階で、ちょっと声優さんの顔のテイストを人形に入れたりしつつ。そこから台本を始めたんです。だから、ホントに当て書きですよね。ボナシューならボナシューの、イメージする姿形にぴったりのキャスト(=人形)があるわけで、それを頭に入れて書くわけですから「今までで一番書きやすかった。こんなことはこれまでなかった」と、よくおっしゃってます(笑) 


——人形の制作自体にはどのくらいかかったんですか?

 二次元の段階でいろいろ妄想していた時期が半年ぐらい、そこから半年かけて制作したので、1年ぐらいですね。

——ブルガリアからわざわざマエストロを招いたらしいですね。

ノーヴァのアイデアです。東欧って、造形から演出まで含めて人形劇が盛んなんです。小学校で人形劇の授業があったり、大学に専門の施設があったり。人形の衣装制作をしている山村エナミさんって方の娘さんが、たまたまブルガリアへ人形造形のために留学してまして。そこからいろんな人を経由して“テレビ人形劇の生き字引”と呼ばれるイヴァ・ソヴァ・バジエヴァさんと、演出も造形もからくりも1人でできる人形師ディミタル・ゲオルギエフ・ディミトロフさんに来ていただくことになったんです。それで粘土で型を作って木を彫ってからくりも入れて人形に仕上げるまでを、2ヶ月ぐらい住み込みでやってもらいました。井上文太さんはもうまかせっきりで、「すばらしい技術だ」と。
ダルタニアン全身
——実際に収録現場で見せてもらいましたが、置いてあるときと、操演の方が手にしたときとでは、人形の佇まいが完全に変わるのに驚きました。陳腐ですけど、魂が宿るというか。

キャラクターデザイナー、人形製作者、声優さん、操演さんみなさんの、キャラクターを生み出そうとする情熱というか、思い、執念みたいなものが、ひとつに凝縮されていくわけですからね。ぞくっとしますよ。 


——見てると、先に声優さんの声を収録しておいて、それを流しながら人形に演技をつけるんですね。

声優さんが、映像を見たあとでおっしゃることがあります。「人形がこういうふうに動くんだったら、こう演じておけばよかった」って。プロフェッショナルゆえのことだと思います。声優さんには、台詞録音のときに、セットや演技プランもお伝えするのですが、声優イメージの中で演じるわけですから本当に大変だと思います。操演さんは、台本を読んで自分の固めた演技イメージの上に、声優さんの気持ちを乗っけて演じています。これもまた大変な作業。声優さんの声をガイドにして、人形操演をしてもらい、その映像を見て、もう一度、声をあてる、いわゆるアフレコをという作り方もあるのかも知れませんが、今度は、操演さんがそれならばもっとこう演じたいってなるかも知れません。互いにプロフェッショナルなので、完璧を望むゆえの葛藤があると思うのですが、演技イメージに個人差があるのは、人形劇ならではのことで、僕は逆にそれがキャラクターに深みを与えているのではとも思っています。みなさんにはどう映っていますか? 
  

——子どもがどきっとするシーンもありますね。

そうですね。もともとはこの作品、6年生を対象にしてるんです。三谷さんともかなり話したんですが、その年代って、大人の世界を垣間見たり、本物を見ることで刺激を一番受けるんですよね。だから大人に通用するものを出さなければダメだと。昔の『八犬伝』とかって、ものすごく難しい言葉とか漢字を使ってたし、大人のドロドロしたアンヌ王女/逆光/城の中/城の中2世界をそのままサラッと描いたりしてたんです。それで初めて得る知識や経験がありました。今のテレビってそうじゃなくなってるんですね。どんな漢字でもルビ振ってるし、面倒なところは割愛するし、丁寧すぎる。それはあんまりやりたくなかった。『新・三銃士』はあの時代のスタンスで、わりと不親切です(笑)。原作通りに裏切りや、妬み、不倫とか、逃げずに大人の世界を描こうよと。それで覚える。教科書も大事ですが、そこでは学べないことがあるのかも知れませんね。 
 
 
——まったく幼児向け要素はないですね。

低学年とか幼児に受ける必要はないと思っていたんですけど…そうじゃないことがわかってきました。どうやら2~3歳の子が釘付けになってると。絵の美しさや、キャラクター性の高さ、面白い台詞の印象は強いと思います。ストーリーは好きなように解釈してると思うんですけど、人間じゃないものに面白い光が当たってたり、キレイなものをまとってたりするところに、幼児は僕らにはわからない面白さを見てるんじゃないかな。

——照明にもすごく力が入っているのはよくわかります。

やっぱりハイビジョンだし、隅々まで見えますからね。最初に「手作りの温もりを感じ取ってほしい」「色と細部を徹底してやろう」ということを、打ち合わせでも散々言っていたし、こだわるところは全部こだわりたかったんです。人形劇は世界観が生命線でもありますからね。色観、空気感で引き込むことができる。結局、そこで今、幼児が釘付けになってくれているのかもしれないですね。それともうひとつは、照明技術も上がっていると思います。ドラマをやってる照明さんが、ドラマを撮るときの技術をそのまま持ち込んでくれてて、みんな面白がって仕事してくれるんです。大河でやるように、夕景でこのセットに照明を当てたら…もっとリアルにするためにトッコウを当ててみよう、煙を焚いてみよう…。そういうことを現場現場で考えて。事前打ち合わせはかなり綿密にやってますよ。美術打ち合わせ、技術打ち合わせも同様に。 


——背景の美術も小道具も細かいところまで手が加えられてる。お城の内部とか。国王陛下の部屋の壁の柄、人形の服の材質、教会内部の塵、朝靄…… 
 
どこを撮ってもいいように作ってあるんですね。美術さんも「さあ、どこからでも撮ってくれ!」みたいな感じ。とにかくカット切り替えてカメラポジション変えて、どんどんアップ撮ってほしいって。美術家としてのプライドみたいなものをガンガンぶつけてきていて。この部分をここまで作り込んだのだから、しっかり見てほしいと。セットは映像デザイナーが描き、NHKアートが作ってるんですが、小道具はスタジオ・ノーヴァが作ってる。そこにも矜恃があるんですよ。あのセットに負けないようないい小道具を! それぞれがどれだけイイモノを作るか、っていうふうになっていて。 
小道具(銃)

——記憶に残るセットとか小道具とかってありますか?

第1話に出てきたガスコーニュの草原。最初はNHKのスタジオで撮っていたんですが、150坪ある113スタジオが、全部が草原になっていて。「え、ここであの人形が動くの!? 人形40~50センチなのに!?」って。でも、これを撮った画がすごかった。奥行きがとにかくあって、まるでオーストラリアでロケしたみたいでした(笑)。「なるほど、これだけ広くつくりこんだセットで人形を動かすとこうなるのか!」と。いける!って思ったのはそのときですね。



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番組data
番組名 新・三銃士 ジャンル その他
放送局 日本放送協会
放送日時 教育テレビ
第1話~5話   10月12日~10月16日  18時から18時20分
第6話~10話 10月19日~10月23日  18時から18時20分
第11話~40話 毎週金曜 10月30日~平成22年5月28日 18時から18時20分
番組URL http://www.nhk.or.jp/sanjushi/index.html
主なスタッフ チーフ・プロデューサー・紀平延久(敬称略) スタッフ数 約100人
主な出演者 脚色・三谷幸喜 語り・田中裕二(爆笑問題)
ダルタニアン役・池松壮亮、アラミス役 他・江原正士、コンスタンス役 他・貫地谷しほり、アンヌ王妃役 他・瀬戸カトリーヌ、ポルトス役 他・高木渉、ミレディー役 他・戸田恵子、アトス役 他・山寺宏一、ベルトラン役・西田敏之、操演・スタジオ・ノーヴァ (敬称略)
放送開始日 2009年10月12日

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