操演者の手にかかると、まるで生きているが如く表情が出てくる

新・三銃士

『新・三銃士』とは……

発想し、提案したのはチーフ・プロデューサーの紀平氏だったことは間違いない。ただ、彼一人の考えではおそらく実現しなかったという。NHKで眠り続けていた、このなかに特異なコンテンツを好きな人がいっぱいいたこと。それで育った人たちが現場で活躍していたこと。まずは“復活”までの、さまざまな背景。 



——そもそも、なぜ人形劇だったんですか? チロリン
 
 2009年は教育テレビの50周年で、企画が募集されてたんです。自分自身と教育テレビ、ということで考えたとき、強烈に記憶に残っていたのが人形劇だったんですね。なぜなのか。自分なりに考えたり分析してみたりすると…もちろんストーリーの面白さもあるけど、人形の木の温もり、相反して動きに制限のある人形が意志を持ち始めることの怖さや独特の世界観が、想像力をおおいに刺激してくれたからだと思いました。人の手がたくさん関わって作られてることなんかも、子ども心になんとなく感じていたように思います。僕個人的にはデジタルな映像表現はあまり好きではないので、なるべく人の手が感じられるもので、心に深く残るものを提案したかったのです。 
  

——『三国志』以来、14年ぶり。“人形劇復活”と言われてますが。
三国志
 学校教育番組部というセクションでは、人形劇自体は継続して作っていました。『ざわざわ森のがんこちゃん』とか『名作子ども人形劇場』とか。ストーリー性を持たせて連続ドラマとしてやるという意味では、14年ぶりなんです。その間、社会のニーズに合わせてアニメやCGを使う実写の子ども番組に移ってた気がします。僕自身は当時、学校教育番組部ではなかったんですが、“いまはたぶん人形ではないんだろう”っていう空気があったんじゃないかと思います。逆にいまは、技術とか美術とかも含めて、“もう1回復活させよう”っていう機運になってきていたんですね。この企画を進めていくなかで、人形劇で育った人たちがNHKにたくさんいることがわかったんです。みんな僕と同じようにセリフとか人形の造形とかすごく覚えていて、やっぱり子どもなりに映像から感じ取るものが大きかったんでしょうね。そこを探ってみたいという気持ちもあります。 


三銃士キービジュアル——そこで17世紀を舞台にした『三銃士』を取り上げたのは?


脚本の三谷幸喜さんと話し合って決めました。今、人形劇の認知度が低いんです。下手したら幼児の観るものだと誤解されかねない。それで、まず作家のネームバリューが必要だと思って、三谷幸喜さんに声をかけたんです。そしたら三谷さんもずっと人形劇が大好きで、前からやりたかったんだって言ってくださって。いわば相思相愛(笑)。で、当の三谷さんが“三銃士をやりたい”と。三谷幸喜さんが『三銃士』を書けば必ず面白くなるという手ごたえを、もうそのときに直感しました。そして、生きていく指針となるような、教育的メッセージを毎回盛り込んでほしいと御願いしました。「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために」という名文句を生み出した作品ですから、三谷さんならば、心にすっと届く沢山のメッセージを多様な手法で盛り込んでいただけるだろうとも思いました。初めてお会いして30~40分お話しして、すんなり決まりました。ただそのときの最初の20分ぐらいは、三谷さんの「いかに自分が人形劇を好きか」というお話でしたけどね(笑)。 
  


——番組のテーマは「関わろうとする力」。これも三谷さんが……?
  ダルタニアンとコンスタンス

こちらで考えて三谷さんにぶつけました。今、コミュニケーション不足っていわれて久しいですよね。それはなぜか。そもそも「どうやったら他者と関わることができるのか」ということすら、今はみんな考えないのではないか、って思ったんです。「関わる」よりも前の段階で何が必要かって考えると「関わろうとする力」なんですよ。ダルタニアンは、実は原作でも相当にお節介焼きです。自分のわからないことは人に聞いたり相談したりするし、他人がわからないと言ってることについても、相談に乗るどころかべつの人に聴きにいったりする。象徴的なキャラクターです。「まず一声かけることを考えてみようよ、そこから何か始まるかもしれないよ」っていうことを言いたいんです。三谷さんも“それは三銃士にピッタリですね”っておっしゃって。三谷さん作詞の『一人じゃない』っていうエンディングテーマにもつながってるんですね。自分ひとりだけじゃなくて、どこかにキミを見てくれてる人がいるから、関わろうよ…っていう」 
  


——歌の平井堅さんは、すんなり?
平井堅

 三谷さんと親交がおありになるからか、二つ返事でOKをいただきました。平井さんはこちらの意向でした。というのも、メッセージ性の強い曲を書いてもらいたかったから。僕がイメージしてたのはディズニー映画『三銃士』のテーマだったんです。ロッド・スチュアート、スティング、ブライアン・アダムスが歌った「ALL FOR LOVE」。平井さんだよなぁって、ずっと思ってたんです。それで三谷さんから歌詞をいただいたら、ものすごくシンプルで。平井さんも「これで全部?」っておっしゃってたんですが、三谷さんは「これでいいんです」と。まぁこれが、平井さんに曲をつけていただくと、ホントによくて…。 
  


——すみません、話を戻します。で、企画が通って制作がスタートして、実現に至るまで結構戸惑いとかはありましたか?


最初から全部、戸惑いです(笑)。この規模でやるのが14年ぶり。資料もほとんどなし。何にどの程度お金をかけるのが普通なのか、何人のスタッフがどのくらいのスパンで動くのかもわからず…。プロデューサーの仕事は、番組の人・金・物のマネージメントをすることです。でもそれがほとんど見えなかった。ほんの少し残っていた資料と先輩のアドバイス、あとものすごく力になってくれたのは『スタジオ・ノーヴァ』のみなさん。人形劇のプロフェッショナルです。人形製作・小道具製作、実際に人形を操る操演の方々の窓口、彼らへの人形指導…かなりアドバイスいただきました。 


操演者——どういうやり方ですか? 


まずは好きな絵図で世界観や人形のイメージを提示して、それからこんなストーリーで、何分で何話で……って。それに対して予算とか期間とかスタッフの人数とかの要素を見積もってくれるわけです。ノーヴァはテレビ以外の人形劇ソフトも作っていて、完パケ納入もできるチームなのでそこに頼りました。とにかく最初に描くのは、最大限にイイモノ、やりたいこと! それに対する予算を出して、そこから少しずつ削っていく、という形で進めました。でも、実はあまり削ってないんです。クオリティの高いものをつくろうよって機運が高まり、予算の中に収めるのは何とかするからってみんなが努力しました。 
  


——準備期間はどの位かかりましたか?


 他の番組を持ちながらでしたから……提案したところから考えると、収録に入るまで、1年10ヶ月ぐらい。最初に三谷さんに声をかけたのが2008年の初頭で、春ごろからキャラクターデザインのコンペ、夏ごろから三谷さんとプロットを詰め、キャラクターデザインの方と人形の顔を考え、平行してセットとか世界観とかを話し合い、10月ごろから人形製作、2009年の3月に人形を作り終わって、4月から収録。 


——関わるスタッフが多そうですね?


いま、収録は緑山スタジオなんですが、差し入れをするときに70人分もっていくので、現場にはそのくらいはいます(笑)。声優さん、音声の技術さんや音響効果さんを合わせると、トータルで100人ぐらいの大所帯ですかね。 


——あの、ちなみに三谷さんって、脚本を書くとき、当て書きですよね。人形の場合、どうしたんですか?


当て書きですね。 


——人形に!?
 

ええ。


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番組data
番組名 新・三銃士 ジャンル その他
放送局 日本放送協会
放送日時 教育テレビ
第1話~5話   10月12日~10月16日  18時から18時20分
第6話~10話 10月19日~10月23日  18時から18時20分
第11話~40話 毎週金曜 10月30日~平成22年5月28日 18時から18時20分
番組URL http://www.nhk.or.jp/sanjushi/index.html
主なスタッフ チーフ・プロデューサー・紀平延久(敬称略) スタッフ数 約100人
主な出演者 脚色・三谷幸喜 語り・田中裕二(爆笑問題)
ダルタニアン役・池松壮亮、アラミス役 他・江原正士、コンスタンス役 他・貫地谷しほり、アンヌ王妃役 他・瀬戸カトリーヌ、ポルトス役 他・高木渉、ミレディー役 他・戸田恵子、アトス役 他・山寺宏一、ベルトラン役・西田敏之、操演・スタジオ・ノーヴァ (敬称略)
放送開始日 2009年10月12日

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