500ページを超える『紅白歌合戦』(写真は第59回)の台本。

NHK紅白歌合戦

『NHK紅白歌合戦』とは……

最大限の成果を出すには、目の前の仕事に打ち込むしかない。しかし、時にそれは、視野を極端に狭めてしまうことにもなりかねない。世間の流れと隔絶しないよう、常に時代を読み解く力を磨かなければならない。 


─最近の『紅白歌合戦』の視聴者に変化はみられますか?


まず、NHKすべての番組を通じても、『紅白』は間違いなく幅広い視聴者のいる番組です。調査会社のデータを見ても、他の番組のような偏りがかなり少ないんです。一時は若者離れが進んでいると言われ、若年層の視聴率が落ちたこともありましたが、昨年はまた上がってきました。昨今の景気動向も反映して、家でテレビを見る割合が増えたというのも理由のひとつだと思いますが。 


─それも時代の流れでしょうか?


いまは、テレビは「ブラウン管」ではありませんからね。テレビ専用受像機ではなく「映像モニター」であり、そこでゲームを楽しむ人がいればDVDで映画鑑賞している人もいる。さらに、カウントダウンライブなどのイベントにいく人もいるでしょうし、大晦日の楽しみ方は増加する一方です。視聴率には反映されませんが、明治神宮への参拝に並びながら、ワンセグで見ている人もいるでしょう。最盛期は視聴率70%超えもザラでしたが、今の時代に50%を超えるなんていうのは、ちょっとない話かなと。昨年は第1部が35.7%、第2部が42.1%でしたけど、それだけの方に見ていただけるのは、本当にありがたいことです。 


─テレビから離れてしまった人を『紅白歌合戦』で呼び戻したいという気持ちもあるのでしょうか?


職業的にはそうした答えがベストなんでしょうが、個人的にいえば、なにを楽しむかは個人の自由だと思います。『紅白』を観て楽しいと思ってもらえればうれしいですし、そう信じて制作していますけど、友達や恋人とドライブして初日の出を見に行きたいなら、それはそれでいいですよね。コレが一番楽しいんだと、声高に言うつもりはありません。でも、数ある選択肢のなかから『紅白』を選んでいただいたのなら、「観てよかったな」と感じてもらえるようにしたいと強く思っています。 


─長い歴史のある番組ですが、継承していくべきこと、逆に変えなくていけないことは?


時代の雰囲気にあわせて、演出や構成は変えていかなくてはならいと考えています。かつてはバラエティーコーナーが喜ばれていた時もありましたが、今はそうではないと思いますし、無理に続けていけば世間と乖離してしまいます。逆に、変えてはいけない部分は、あくまで歌番組であるということ。音楽を聴いてもらう番組であり、かつ全世代が楽しめるようJ-POPから演歌までラインナップされていることですね。現在は、音楽のジャンルがかなり細分化されていますし、特定の曲だけをスナック菓子のように買えるようになって、全世代のあらゆる人が楽しめる曲や歌番組というのは、非常に難しいテーマです。でも、ビートルズのように、いまだに幅広い世代で受け入れられているアーティストもいますし、『ベストテン』のようにいろいろなジャンルの曲を扱った番組が、再び受け入れられる日が来ないとも限りません。『紅白』は、あくまで全世代に向けた歌番組ということを、忘れてはいけないと考えています。 
  

第56回~第59回の台本
─年末の放送本番まで残り一ヶ月と迫ってきましたが、『紅白歌合戦』という、ある意味特殊な番組をこれから担当されるにあたり、特に心がけることはありますか?

一制作者としてはやはり「現場」が大事であって、今はとにかく本番に向かってまじめに取り組むばかりですね。ただ、気をつけるべきは、一生懸命「現場」に入れ込むことによって自分たちを客観視できなくなり、時代との乖離を感じられなくなってしまうことでしょうか。このことに、最近ようやく気づいてきたんじゃないかと思うんですよ。ながらく、『紅白』らしい独特の雰囲気というか、ベタなシーンがありました。制作側としては「あれでいいんだ」という思いがあり、視聴者側も「これが紅白だよね」と好意的に見てくれていたと思うんですよね。それがあるときから、「紅白はこれだから」とマイナスに受け取られるようになってしまい、制作側もそれに気づけなかった。時代と乖離してしまっていたんです。これは『紅白』に限らない話ですけども、自分が一生懸命打ち込むことで返って周りが見えなくなり、「取り残されているよ」と指摘されるのは一番おっかないですね。そうならないよう、常に客観視する姿勢を持つことが大事だと思っています。




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番組data
番組名 第60回 NHK紅白歌合戦 ジャンル その他
放送局 日本放送協会
放送日時 総合テレビ   12月31日  午後7時15分から11時45分
BS2       12月31日  午後7時15分から11時45分
Bshi      12月31日  午後7時15分から11時45分
ラジオ第1   12月31日  午後7時15分から11時45分
番組URL http://www9.nhk.or.jp/kouhaku/
主なスタッフ 制作統括:井上啓輔/演出:佐渡岳利(敬称略) スタッフ数 約5000人(出演者、出演者側スタッフ等含め)
主な出演者 紅組司会・仲間由紀恵、白組司会・中居正広、50組の出演アーティストの皆さん、総合司会・阿部 渉 ほか、
ラジオ中継・山田康弘、神田愛花(敬称略)
放送開始日 1951年1月3日(1953年12月31日の第4回からテレビ中継開始)
※1953年は、1月(TV実験放送)と12月に2回実施。

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