500ページを超える『紅白歌合戦』(写真は第59回)の台本。

NHK紅白歌合戦

『NHK紅白歌合戦』とは……

国民的番組という称号は、ときに保守的な姿勢を受け入れてしまうもの。しかし『紅白歌合戦』は、最新機材の導入などを積極的に取り入れ、常に一歩先へと進化する気持ちにあふれている。 


─総合司会や紅白司会は、どのような基準で決めますか。

国民的な人気のある方であることと、特にこの3年間は「歌の力」をテーマにしていたということで、番組を理解していただけていて、アーティストをきちんと立てていただける方にお願いしました。今年は、紅組司会に女優の仲間由紀恵さん、白組司会にSMAPの中居正広さんにお願いしますが、お二人とも人気と実力を備えるだけでなく、アーティストのことを第一に考えて進行してもらえる方たちです。 


─アーティストが歌う順番や曲目は?


曲順は、月末の発表となりますが、そのギリギリまで、演出上、最善だと思う順番を考えています。選考方法としては、全体の流れを考慮しつつ、おもしろく見えるように、としかいいようがありませんね。トップバッターやオオトリが注目されますが、それも同じような理由で検討します。曲目に関しては、NHK側からあの曲を歌ってほしいんですとアプローチする場合もありますし、逆にアーティスト側からあの曲を歌いたいと要望を受けることもあります。 


─生放送であるため、オンエアの時間を押してしまうということは常に付きまといますよね?さらに放送が長時間であればある程ちょっとした誤差の積み重ねが取り返しのつかないことになるわけですが、それをどのように対応するのですか?

要所要所にクッションの時間を設けていますし、トラブルが起こっても調整できるよう緻密に時間計算して構成しています。生放送中には何が起こるか分からないので、どんな状況になってもきっちり調整できるよう進行を考えています。でもやっぱり、一部と二部、それぞれ決めら台本中身れた終了時刻にきっかり終われるかどうかは、もっとも緊張するところですね。番組がはじまると、間もなく「40秒押しています」「元に戻りました」といった連絡が飛び交い、その都度「ここのコメントは削れる?」など相談して、絶えず時間調整しています。一部が終わって無事にニュースにいけばホッとしますし、二部が終わって番組自体が無事に終われば、やっぱりホッとしますね。バタバタしているように思われますが、全体的には冷静に対応していますね。 
   


─本番前のリハーサルはどの程度するのですか?


以前はいろいろなバラエティーコーナーがあったために、アーティストの方たちに事前に集まっていただいてリハーサルをしていましたが、今はほとんどありません。だいたい29日に音あわせをやって、30日に第二部のリハーサル、31日に第一部のリハーサルと、この3日間でほとんど済ませます。特殊なコーナーがある場合や、セットチェンジのリハーサルなどは、また別ですけど。このセットチェンジに関しては、相当緻密にシミュレーションしています。たとえば4人組バンドが次のステージに立つとすれば、ドラムやキーボードは30~45秒でセッティングしないとまずい。45秒以上だと長いんです。この転換の早さは、大道具やPAの熟練スタッフの実力ですね。平面図上でセットの配置を確認して、運び出すタイミングや携わる人まできっちり考えつくされています。ただ最近は、以前ほど大掛かりなセットを用いる機会は減ったように思います。昔は曲のイメージに合わせて、竹や風船など具体的な美術セットを用いましたが、今はひとつのベースの中で、曲ごとにアレンジを加えるような考え方なので。 


─当日の運営スタッフの数は?


僕らのような制作スタッフとアーティストサイド、レコード会社などの関係者や、美術関係の人なども含めて考えると、5000人を超える人数になりますね。NHKホールの収容客数は3000人ですから、お客さんよりも多いことになりますね。 


─そこに、アーティストやバックダンサーなど出演者の衣装替えや移動が加わると、ごった返す状態になると推測するわけですが、当日はかなり混乱するのではないのでしょうか。

舞台裏での早着替えを必要とする演出は多くなく、問題ないですね。会場はNHKホールですが、楽屋はNHKの建物にも通じていますので、スタンバイするスペースは十分にあるんですよ。ステージで50人ほどのダンサーが踊っているときに、楽屋では次の曲のダンサー100人が待機して、終わったら入れ違えになって、というふうに淡々と進行していきます。 


─生演奏に関して、どこでどのようにしていますか?


全て生演奏ではないですが、以前はホールの奈落(ステージ真下のスペース)で管楽器とリズム隊、別のスタジオでストリングス等とやっていたんですけど、奈落で長時間演奏しているのは大変ですし、技術的な発達もあって、今では演奏者全員がNHKホールとは別のスタジオで演奏してもらうことができるようになりました。 



─『紅白歌合戦』ならではの特殊なカメラや照明などは入りますか?


『紅白』では、比較的新しいものを取り入れていますね。たとえば、NHKでワイヤレスのステディカムを使ったのは『紅白』が初なんです。当時は0.5秒くらい映像がズレてしまっていて、歌っているアーティストをそれで撮ると音と口が合いませんので、バックショットを撮るようにしたりと工夫しなければなりませんでしたが、今では完全にシンクロするようになりましたから、積極的に採用しています。『紅白』は確かに伝統ある番組なのですが、生放送ということで、実はわりとダイナミックな挑戦ができる場なんですよ。ディレクターたちも自由にやれていると思いますし、技術のほうも、おもしろい新兵器があれば使ってもらいます。 


─過去の演目のなかで、印象に残るものはありますか?


特に「これは!」というのはありませんね。むしろ、ずっと制作陣のひとりとして参加してきましたから、制作者の視点で見ていることが多いです。現場にいるとすごくヒートアップしますから、その場にいるだけでものすごいことをやっているように感じて……まあ実際、すごい規模なんですが。冷静に振り返ると、生放送だからと、どうしても勢いを先行させてしまうときもあるんですよね。あとでVTRを見ると、「これは酷い」と反省してみたり。




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番組data
番組名 第60回 NHK紅白歌合戦 ジャンル その他
放送局 日本放送協会
放送日時 総合テレビ   12月31日  午後7時15分から11時45分
BS2       12月31日  午後7時15分から11時45分
Bshi      12月31日  午後7時15分から11時45分
ラジオ第1   12月31日  午後7時15分から11時45分
番組URL http://www9.nhk.or.jp/kouhaku/
主なスタッフ 制作統括:井上啓輔/演出:佐渡岳利(敬称略) スタッフ数 約5000人(出演者、出演者側スタッフ等含め)
主な出演者 紅組司会・仲間由紀恵、白組司会・中居正広、50組の出演アーティストの皆さん、総合司会・阿部 渉 ほか、
ラジオ中継・山田康弘、神田愛花(敬称略)
放送開始日 1951年1月3日(1953年12月31日の第4回からテレビ中継開始)
※1953年は、1月(TV実験放送)と12月に2回実施。

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