プレーの最高の瞬間をおさえるために予測しながら選手をおってゆくカメラ

Jリーグ中継

『Jリーグ中継』とは……

実に多様な視聴者層を持つNHK。年齢もサッカーへの関心度も、バラバラ。『Jリーグ中継』は、一部の視聴者を切ることはせず、あくまで全視聴者を対象にした、わかりやすくて満足できる番組作りを目指している。


─これまでに最も印象に残っているJリーグの出来事は?

江部 「いろいろありすぎて、これというのはなかなか……。強いてあげるとすれば、2003年のJリーグセカンドステージの最終節でしょうか。4チームも優勝の可能性を残したまま最終節を迎えるという大混戦だったんです。私は、横浜国際総合競技場で横浜F・マリノス対ジュビロ磐田戦のディレクターを務めていました。試合は横浜が勝ったものの、他会場で試合していた鹿島アントラーズが引き分け以下になることが優勝の条件でした。もう無理かなと思ったロスタイムで鹿島が失点し、横浜がまさかの優勝を決めたんです。そのときの競技場の空気は今でも思い出されます」 


─2005年のJ1最終節では、優勝の可能性が5チームもある状況での試合となり、NHKでは5試合すべてを中継しましたね。これはNHKの体制だからこそできたことですか?


江部 「最後まで波乱だったこの年は、最有力のチームの試合をメインにし、逆転優勝の可能性もある他チームにも制作部隊を派遣しました。1試合だけをメインにしたのは、やはりサッカーは90分で展開するスポーツであり、コロコロ変わるとニュースと同じになってしまうから。基本はその試合を見せつつ、他試合の経過も情報として入れ込み、どこが優勝してもフォローできるようにしました。NHKではJリーグ発足以来、常に優勝が決まる瞬間を地上波で放送していまして、5試合もの数を対応しようと決意したのは、そのことが大きいですね」


─競技場によって中継の難しさは違いはあるものですか?

相川 「違いますね。一番気にするのはカメラの位置で、J1や日本代表戦が開催される競技場なら中継の経験も多いので対応しやすいのですが、J2から昇格したチームのホームなど、あまり中継したことがないと準備に時間がかかります。時にはベースカメラを観客席に置かなくてはなりません。そうなるとカメラの後ろにある席から試合が見えなくなりますので、あらかじめその分を買い取って使用したりもするんです。またベースカメラの位置によっては、選手が手前にくると真上に近い角度になったりするので、ピッチ上のカメラでフォローするように気を配ったり。監督によっては近くにあるカメラを非常に気にする方もいますから、状況に応じて対応しなくてはなりません」


─監督や選手の入れ替えによるチームの戦術などによっても、撮り方は変わりますか?

相川 「新しく大物選手が入ってきたというようなときには、その選手を狙ったカメラを置く場合もあります。特徴的な選手のプレーは、見逃したくはないんです。例えば現在の川崎フロンターレには、日本代表の中心的な存在にまで成長した中村憲剛選手がいます。彼のスルーパスをしっかり見せるにはどの角度からがいいのか、スタサッカー5ッフは常に考えながら制作しています。やはり印象的なプレーや選手の成長が感じられるものをドンドン見せていきたいですし、視聴者も期待していると思いますから。 また日本代表戦などの場合は、当然日本のゴールシーンのほうを見たいわけですから、ネット裏のカメラなど日本寄りのカメラを厚く配置して、前後半の入れ替えでカメラを反対側に移動させています。サッカーの歴史は長いですから、カメラの撮り方はある程度研究し尽くされています。それでも大会規模・チーム・有力選手・競技場など状況に応じて変化しなくてはならない部分は、すべての試合でありますね」

江部 「監督の違いや選手の個性、競技場の違いなど、さまざまな要素に柔軟に対応する一方で、サッカーの魅力をわかりやすく伝えるという基本を守ることも、忘れてはならない大事なことですね」


─アジア杯や天皇杯なども含めると、ほぼ1年中競技があるわけですが、モチベーションはどのように保っていますか?

相川 「年間で開催される試合は1年のはじめにわかりますから、全体のスケジュールを設定する日本サッカー協会と連絡を取りつつ、年間の番組内容を決めていきます。制作サイドのモチベーションの保ち方ということですが、あらゆるスポーツ中継に通じることでもありますが、『いま目の前で行われている試合から、ひょっとしたら未来まで語り継がれるような凄いプレーが生まれるかもしれない』という思いがあるのではないでしょうか。リーグ優勝がかかる試合や、W杯のような世界大会ではなくても、歴史に残るプレー、シーンは生まれます。これは制作するしないに限らず、スポーツを見る楽しみのひとつだと思いますけれど、そんな期待感はモチベーションにつながりますし、実際それをライブで視聴者に届けられたときのうれしさは最高です。生中継屋の本質かもしれませんね」


─今後、改善していこうと思われている点は?

相川 「前にも申しましたが、例えば浦和レッズの熱烈なファンであれば、有料の衛星放送で全試合見られる環境があるんです。そうしたなかで、NHKが全国放送で浦和レッズの試合を中継するときは、どのような視点で臨めばいいのか。もちろんコアなサポーターも納得してもらえるようなものにしようと考えますが、番組自体は北海道から沖縄まで放送されますし、テレビの前にいる人はレッズサポーター以外が圧倒的多数なわけです。そもそもサッカーに興味のない人もいます。ですから、ベーシックな部分からわかりやすくサッカーを見せていかなくてはなりません。さまざまな視聴者にあわせてミックスさせようというのですが、これは実際ものすごく難しいことで、正解というものはなかなか見つかりませんね。最近では、テレビで見るよりも、直接サッカー場で観戦する人も多くなってきました。これはサッカーの盛り上がり・スタジアムの雰囲気という点で素晴らしいことだと思いますが、テレビマンとしては、やはりテレビ観戦も楽しいと感じてもらいたい。今後も研鑽していきたいと考えています」





powered by Yahoo!
    JAPAN

 

ご感想をお寄せください

当フォームより、ご意見・ご感想をお寄せください。
いただいたご意見・ご感想は番組制作者へお届けする場合がございます。

ご感想を入力
番組data
番組名 Jリーグ中継 ジャンル スポーツ
放送局 日本放送協会
放送日時 総合テレビ、BS1
番組URL http://www.nhk.or.jp/sports2/soccer/soccer.html
主なスタッフ プロデューサー・江部賢治、
ディレクター・相川直人(敬称略)
スタッフ数 1試合 約30人
主な出演者 解説者・加茂周、山本昌邦、木村和司、早野宏史、原博実、
小島伸幸、宮澤ミシェル、山野孝義(敬称略)
放送開始日 1993年4月 「Jリーグ中継」開始

最新のインタビュー