生の笑い声は番組のバロメーター

探偵!ナイトスクープ

探偵!ナイトスクープとは……朝日放送、金曜23:17~24:12放送。系列各局でも放送中(テレビ朝日を除く)。首都圏では2週遅れで神奈川テレビ(略称tvk)、東京メトロポリタンテレビ(略称MXテレビ)で放送中。「この番組は、視聴者から寄せられた依頼にもとづいて、探偵局長が優秀なる探偵たちを野にはなち、世のため、人のため、公序良俗と安寧秩序を守るべく、この世のあらゆる事どもを徹底的に追求する娯楽番組である」という番組オープニングテロップがすべてを表している。88年3月に、上岡龍太郎を初代局長にスタートし、深夜帯の放送ながら、30%超の最高視聴率を叩きだし、関西地区での20年間の平均視聴率が20.1 %というオソロシイ番組。2009年1月9日現在で放送回数は1021回。丸21年を迎える今年3月には、初のゴールデン特番も決定! 世のさまざまなバラエティで使われる手法やネタの“オリジナル”がこの番組で会うケースも少なくない。

もちろんそもそもは「番組を作れ」という命があったのだ。が、いくつかの要素が並行して存在していたのだ。当時、撮影機材の小型軽量化が進んでいて、それを生かしてロケとスタジオをうまく融合させたバラエティはできないかと考えていたこと。『わいわいサタデー』のワンコーナー『あの人は今!?』の、“調査・報告” という体裁。上岡龍太郎という“司会者”の知られざる才能に気づいたこと。『ラブアタック!』の闊達な番組作りの雰囲気、……。
それが、ひとつの言葉で、瞬時に番組のビジョンとなった。 


—番組が生まれたきっかけを教えてください。

「何か調べて帰ってきて報告するっていうと……、探偵ですよね」と、石原康男くん(『探偵!ナイトスクープ』初代ディレクター)が言い出して、そのときに一挙に、番組の姿が見えたんです。ふたりで毎日、朝日放送前のホテルプラザでお茶を飲みながら、どういう番組を作ろうかと考えていました。その日は、上岡龍太郎さんを中心にすえて、何か面白い番組が作れないものかと考えた。
そのとき思い出したのが、上岡さんの批評の才能。それ以前に私が担当していた『わいわいサタデー』に『あの人は今!?』というコーナーがあって、もうテレビから姿を消してしまったかつての有名人の消息をVTRで調査してくるんです。そのビデオを見たあとの司会の上岡龍太郎さんの批評コメントが絶妙でした。上岡さんのこの才能を生かして画期的な番組作りができないか?……っていう話をしてるときに、石原くんから「探偵」というキーワードが出てきて。 


—一瞬で!?

「探偵」というキーワードを得て、一瞬で番組の構造がすべて見えたんです。目にありありと浮かんだのは、ロンドンのベーカー街のシャーロック・ホームズとワトソンのオフィスです。そこで、視聴者一人一人の依頼に応えるべく努力をして調べて「この結果はどうでしょう!よくやったでしょ?」と、局長の上岡さんに向かってビデオで発表する。そのスタジオのイメージが一瞬のうちに全部見えたわけです。「あ、できた!もう完璧!これはぜったい面白い番組になる!」と。その場で想定依頼文までいっぱいできた(笑)。それで各プロダクションのいろんなディレクターに声をかけたらみんな乗ってきた。「この番組って、あらゆることが映像にできるんじゃないですか!?」って(笑)。
それまで上岡さんの司会進行がすごくうまいということは、世間のみんなが知っていたんです。でも一言コメントが非常に鋭くてユニークであるということについては、当時あまり気づいてる人はいなかった。私は『わいわいサタデー』という番組をやっていたおかげで、そのことをよく知っていたんです。上岡さんの、物事の本質をとらえてスパッとコメントする才能。この才能を生かせば、まったく新しい、画期的な番組が作れると思ったんです。  
下手からみる全体図 上手からみる全体図 


















—『ラブアタック!』でも上岡さんと御一緒されてましたけど、この番組をやったことも大きかったと本(『探偵!ナイトスクープ アホの遺伝子』)に書かれてましたね?


『ラブアタック!』は私が25歳のときに、自らの失恋体験をもとに企画立案して、立ち上げから6年半ディレクターとして演出していました。上司の人たちは、25歳の若造に「好き勝手にやれ!」って、好きなようにさせてくれた。朝日放送にはそういう伝統がありました。テレビというものをゼロから自由に作り上げ、成功してきたかつての若者たちが当時ちょうど管理職クラスになっていて、今度は新参の私に同じような自由を与えてくれたんです。そういう風土で育てられたので、自分が30代後半になってナイトスクープのプロデューサーになったときに、若いディレクターに同じように自由にやってもらおうと思いました。そこで、みんな好き勝手にやれる場所を作りました。 


—それがうまく機能して……。

ネタ選びから、演出から、どの探偵と組むかというところまで全部ディレクターが自分の意志でできるというシステムを作りあげたんです。ディレクターと探偵の組み合わせは毎回変えるんですが、次に誰と組むかはディレクター自身に選んでもらっている。完全にトップダウンを排除したこういう構造でやると、ディレクターは言い訳できなくなるんです。彼ら自身が選んで彼らの好きなような演出で撮ってきたビデオですから、そこには彼らの全人格・全能力が込められてる。うまくいったときには「すごい!天才!」となり、まったくダメなときには「最低!カス!」ということになるわけです。 


—なるほど。

最近、私、この番組の構造を分析するとき、“プレゼン形式”という言葉をよく使うようになりました。この番組は、「おそらく世界初の“ビデオをプレゼンすることに特化した番組”」だということなんです。かつて、映像は司会者側から出ていた。ニュースもアナウンサーが紹介しているし、クイズ番組でも問題VTRも解答も司会者が紹介していた。つまり番組内での“権力のある側”から映像が出されていたわけです。ナイトスクープではそれを“下っ端”から出して、“権力の側”にプレゼンする。そう説明すると、この番組の特徴がすごくわかりやすいでしょ?まず依頼文という課題が与えられる、それに対して探偵が「最高のやり方で答えを出してきました」と、ビデオのアピールをする。そして評価を仰ぐ……上岡さんは非常に鋭い評価の言葉をくれる。そういう構図で番組は成り立ち、成長してきたんです。 


—探偵局長に対する探偵たちのプレゼンであるというのはすなわち、ディレクターたちの作品のプレゼンでもあるんですね。

その通りです。この“プレゼン形式”って、視聴者が番組をいろんな立場から観られるのも強みでね。まず依頼文があって、依頼者に探偵が会いに行くから、最初は探偵に思い入れをするんですよね。そして次に依頼者にも。で、ビデオを提出した後、視聴者は今度はプレゼンされる側、上岡さんや西田さんの側に立って「うーん、これはよかった!」とか、「ここがダメだ」、「無駄が多い」っていう批評する方に回る。
私はこの“プレゼン形式”は、1980年代の日本の視聴者にとって、ものすごく新鮮だったと思います。 


—意外にもそこが本質だったわけですか。

ナイトスクープに似た番組ってたくさん作られましたし、ネタをそのままパクる番組もありましたが、“プレゼン形式”という本質をとらえたものはなかったですね。うまくとりいれて成功したのが、『情報プレゼンター とくダネ』ですよね。かつてのワイドショー番組って、レポーターは視聴者に向かって情報を伝えていた。あの番組は小倉(智昭)さんという司会者に向けて取材ビデオをプレゼンしますよね。うまく成功したのが、お笑いじゃなくて情報の世界だった。『とくダネ』を立ち上げた西渕憲司さんが「ナイトスクープも好きで参考にもしました」っておっしゃってくださいました。いまはこの形式、日本のテレビにはたくさんありますが、意識的にそれに特化してレギュラーでやったのは、おそらく私たちが世界で最初ではないかと。日本はTVの先進国のはずですから、日本で最初ということは世界で最初じゃないかなと(笑)。 


—タイトルの由来を教えてください。ナイトスクープの“ナイト”って“KNIGHT”ですよね。

パリッとした品のいい雰囲気でいこう、ということを最初から考えていて。探偵には、フォーマルな感カメラ越しセットじでと、ネクタイしめてもらってました。べつに彼らに「騎士であれ!」と思っていたわけではないんですけどね……まあそういう思いもあったかもしれないかなあ。実はこれでよかったのかどうか迷いもあって(笑)。吉本ばななさんの『ハチ公の最後の恋人』という小説にナイトスクープが登場するんですけど、これがイタリア語に訳されたんです。それを見てみると“NIGHT”になってた。そんな風に海外に紹介されるなら、わかりやすく“夜”でもよかったかなあ(笑)。 



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番組data
番組名 探偵!ナイトスクープ ジャンル バラエティ・音楽
放送局 朝日放送(テレビ朝日系)
放送日時 関西地区 毎週金曜 23時17分から24時12分
関東地区 東京メトロポリタンテレビ 毎週金曜 23時30分
テレビ山梨・とちぎテレビ・テレビ埼玉では、ほぼ1ヶ月遅れで放送
番組URL http://www.asahi.co.jp/knight-scoop/
主なスタッフ CP・松本修、P・栗田正和、D・近藤真広、佐々木匡哉、他(敬称略) スタッフ数 25名
主な出演者 西田敏之、岡部まり、北野誠、桂小枝、長原成樹、石田靖、間寛平、松村邦洋、
竹山隆範、たむらけんじ、他(敬称略)
放送開始日 1988年3月(2009年4月で21年目)

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